毎年2月と9月に開催されるファッション界のビッグイベント、New York Fashion Week(ニューヨーク・コレクション)。

今回、ニューヨークの巨匠トム・ブラウン(Thom Browne)のランウェイショーにて、Taro’s Origami Studioがステージセットを手掛けました! New York Fashion Weekでも主役級のブランドで、洗練されたファッションと独創的なランウェイショーが毎回注目されています。

今回披露されたランウェイショーは、折り紙の舞台装置とニューヨークらしいスタイリッシュな表現が融合した素晴らしいアートとなっており、製作に参加したTaro’sチーム一同もその出来栄えに感激しました。この世界的に注目度の高いイベントで、ファッションショーと折り紙のコラボレーションという新たな可能性に挑戦でき、私たちもたいへん嬉しく思っています!

このブログでは本作品の制作過程をご紹介します。

このまたとないチャンスがTaro’s Origami Studioに舞い込んだのは、本番1ヶ月ほど前のことでした。

モダン・テーラリングの”GOAT“として知られるデザイナー、トム・ブラウン。彼とそのチームが見つけたのが、数ヶ月前に私たちTaro’s Origami Studioが設置した、アトランタPRUMC教会大聖堂での鳩の折り紙のプロジェクトでした。

これをファッションショー用にアレンジできないか、とのトム・ブラウンからの依頼を受け、Taro’sチームでは急いでデザインを開始しました。

本番まで6週間、スピードが勝負です。NYブルックリンスタジオのマネージャーFrank Lingが鳩の折り紙のデザイン、代表アーティストのタロー・ヤグチがファッションモデルのミニチュアの製作、そしてコーポレートプロジェクト・マネージャーのBen Friesenが設置機構の設計を担当し、同時進行での製作が始まりました。ひとつひとつの段階でThom Browneブランドの美学を反映させるために細心の注意を払い、何度も修正と改良を繰り返しました。

ここからは鳩、ミニチュア、そしてショーのラストで使用された薔薇、それぞれの製作過程をご覧ください。

1. 鳩の折り紙

まず最初にデザインを始めたのは、ランウェイを飾る鳩の折り紙です。Thom Browneチームは、他では真似できないアーティスティックで繊細な折り紙を求めていました。まずはさまざまな鳥の折り紙の参考写真を見ていただき、具体的なイメージを固めていきます。

参考資料から構想を練った結果、当初予定より数を増やし、合計で1000羽の鳥をステージに配置することになりました。数多く設置するには、見栄えと製作期間を考慮し、一羽一羽のデザインをシンプルにする必要があります。そこでTaro’sでは、よりシンプルな参考作品をいくつかご提案しました。

この中からPerakeet(インコ)とDove(鳩)を採用することになりました。特にインコの折り紙は床に安定して立てることができ、今回のショーにはぴったりです。鳩は天井から吊るした時に安定性が高く、美しく見えることから選ばれました。

次にこのステージセットにふさわしい紙質、色、サイズをTaro’s Origami Studioの長年の経験から選定しました。折り紙の製作はBrooklyn Studioのアーティストたちによって急ピッチで進められ、わずかな期間で1000羽もの鳥が完成しました。

*

2. トム・ブラウン・スーツの折り紙のミニチュア

1000羽の鳥に続く2つ目の課題は、より細かいデザインと技術が要求されるものでした。それはランウェイの中央に配置する、小さな鳥籠の中に入れる人間の制作です。

このデザインにはTaro’s Origami Studioの代表アーティストであるタロー・ヤグチが取り組みました。タローはTOKYO 2020オリンピックとの公式コラボ折り紙など、これまでにも人間の折り紙のデザインで実績があります。

当初、タローは人間の形をシンプルかつ芸術的に表現する折り紙を想定していました。最初の2、3バージョンは、はさみ等も使わない伝統的な折り紙作品でした。

*

しかし、タロー・ヤグチとTaro’s Origami Studioの実力を見て、Thom Browneチームはもっと大胆な構想を実現できると考えました。それはThom Browneが世界の一流ブランドとして知られるきっかけとなった、あのシンプルなグレーのスーツ”costume”を、折り紙で完全再現することです。

このスーツがいかにアメリカのファッション業界を変えたかについては、雑誌『The New Yorker』にて詳しく紹介されています

*

このスーツの完全再現のため、細部にわたってこだわりの調整が成されました。こちらがその進化の様子です。最終的にゴーサインの出た作品がいかにThom Browneのスーツを忠実に再現したか、おわかりいただけるでしょう。

3. 折り紙の薔薇の花束

プロジェクトの最後を締めるのは、折り紙の薔薇のブーケの製作です。Thom Browneのランウェイショーでは、ショーの最後にトムがパートナーにプレゼントを贈るのが恒例となっています。今回のショーでは、ステージ上の世界観から飛び出した折り紙の花束が贈られることになりました。

Taro’sからは見本として2つのバージョンをご提案しました。最初のバージョンは薔薇が細かく繊細なものでしたが、それでは遠くのカメラで見ると何だか分からないので、花のサイズを元の2倍にし、茎も18インチ(約45cm)という大きなブーケになりました。

薔薇のブーケの製作はFrankがベースデザインを担当し、実物の製作はタローが行いました。タローはスーツの紙人形をショー会場に運んだ後、トム・ブラウンから薔薇のデザインの承認を得て、ショーまでの2日間の間に現地で本番用のブーケを一から製作・完成させました。

View this post on Instagram

A post shared by WWD (@wwd)

4. ランウェイショー

すべてのステージセットを設置し、最後にタローみずから、ショーに出演するランウェイモデルたちに折り紙の鳥の折り方を指導しました。トムの演出アイディアは、ファッションショーの間ずっと2人のモデルが舞台上の机で折り紙を折っている、というものでした。

ニューヨーク時間2025年2月11日17時、世界中からのVIPゲストが見守る中、ランウェイショーが開幕しました。Thom Browneの2025/2026秋冬シーズン新作コレクションのお披露目です。

こちらがその様子です。ショーの全貌がThom Browne公式YouTubeで公開されています。ぜひご覧ください。

Taro’s Origamiチーム一同、この素晴らしいショーに参加できたことをたいへん誇りに思っています!

*

今回発表された秋冬新作コレクションは、Thom Browne 公式ウェブサイトでご覧いただけます(日本語)。ランウェイショーの動画も掲載されています。